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在宅医療を支える『在宅療養支援診療所』とは

2022年02月08日

訪問看護や往診といった、自宅にいながらも医療を受けることが出来る在宅医療は、通院や入院に比べてストレスが少ない上に、精神的な安定を図ることが出来るため注目されています。

その在宅医療を支えているのが『在宅療養支援診療所』です。

では、在宅療養支援診療所はどのような施設になるのでしょうか?

今回は在宅療養支援診療所に加えて、機能強化型在宅療養支援診療所についても解説します。

在宅医療を支える在宅療養支援診療所

患者が住み慣れた場所で生活を行い、大切な人と生活を送りながら療養を行う在宅医療。

その在宅医療を支えているのが『在宅療養支援診療所』です。

在宅療養支援診療所は自宅療養をされる方に対して、在宅医療を提供し快適な生活を支援していく診療所のことを指します。

在宅医療は自宅で看護や介護を行いたいと考えている人にとってはなくてはならない医療の選択で、必要な治療を行うことに加えて、体調管理や服薬管理を行い病状の把握を行ったり、自宅で生活を行うことに対して必要となる生活動作や運動機能のリハビリテーションを行っていくなど、自宅で過ごしながら病状や健康維持を図っていきます。

その在宅医療を行うためには、訪問看護や往診などの様々な医療的なケアを行っていく必要があり、自宅でいながらもしっかりとした医療を提供することが重要になります。

自宅で医療的なケアや治療が必要な方に対して、医師が自宅へ訪問しその方に必要な支援を行っていくために、診療や診察を行う医療施設の内、定められた基準をクリアした施設のことを『在宅療養支援診療所』と言います。

在宅療養支援診療所は医師や看護師を在宅医療を行っている方に対して責任をもって必要な医療を提供するために、多くの基準をクリアしなければなりません。

在宅療養支援診療所の施設の基準としては以下になります。

①患者様を直接担当する医師または看護師が、患者様およびそのご家族様と24時間連絡を取れる体制を維持すること。

②患者様の求めに応じて24時間往診の可能な体制を維持すること。

③担当医師の指示のもと、24時間訪問看護の出来る、あるいは訪問看護ステーションと連携する体制を維持すること。

④緊急時においては連携する保険医療機関において検査・入院時のベッドを確保し、その際に円滑な情報提供がなされること。

⑤在宅療養について適切な診療記録管理がなされていること。

⑥地域の介護・福祉サービス事業所と連携していること。

⑦年に一回、在宅でお看取(みとり)した方の人数を地方厚生(支)局長に報告すること。

(引用:日本訪問診療機構ホームページ『在宅療養支援診療所』より)

上記の条件を満たした施設が在宅療養支援診療所として認められ、在宅医療を提供することが出来るようになります。

また、2016年の4月より「在宅医療を専門とする在宅療養支援診療所」に下記のような要件が追加されました。

・在宅医療を提供した患者数を、在宅医療及び外来医療を提供した患者の合計数で除した値が9割5分以上であること。( 在宅医療の占める割合が95%以上であること)

・直近1年間に、5カ所以上の保険医療機関から新規患者の診療情報提供を受けていること。

・当該診療所において、過去1年間に在宅における看取りの実績を20件以上有していること又は重症小児の十分な診療実績が過去1年間に10件以上)を有していること。

・直近1ヵ月の施設入居時等医学総合管理料の算定件数が、施設入居時等医学総合管理料及び在宅時医学総合管理料の合計算定件数で除して7割以下であること。

・直近1ヵ月に在宅時医学総合管理料又は施設入居時等医学総合管理料算定患者のうち、「要介護3」以上又は当該管理料の「重症患者」に該当する者の割合が5割以上であること

(引用:あいホームケアクリニック(在宅療養支援診療所とは))

このように、在宅療養支援診療所の施設として認められるには、多くの設置基準を満たさなければならず、在宅医療であっても、しっかりと医師のケアを受けられることが出来るようになっています。

在宅療養支援診療所の特徴

在宅療養支援診療所は、増加していく在宅医療を支える施設として重要な役割を担っていますが、どのような特徴があるのでしょうか?

まず、在宅療養支援診療所の特徴としては、やはり在宅医療のために必要となるケアやサポートが充実しているという点です。

在宅療養支援診療所は通常の外来による診察などは行っておらず、自宅へ定期的に訪問して患者の健康状態を把握、管理を行ったり、生活動作や運動機能の回復のためのリハビリテーションを行ったりする訪問看護や、容体が急変した時や、通院することが困難な場合に医師が直接自宅へ訪問する往診などを行います。

自宅で余生を過ごしたい、大切な人と共に過ごしたい、という思いを尊重していくために在宅療養支援診療所は在宅医療を支えています。

在宅療養支援診療所の診療内容としては以下になります。

・体温や血圧、脈拍といった健康状態の管理、測定

・呼吸状態の確認

・栄養状態の確認、指導

・注射や点滴といった医療的な処置

・褥瘡といった創傷処置

・胃ろうやカテーテルなどの処置、管理

・在宅酸素療法

・薬の処方箋発行

・緩和的な治療

・ターミナルケアなど

在宅療養支援診療所では、基本的な訪問診療以外にも、緊急時には24時間365日いつでも往診を行うことが可能となり、費用に関しても比較的抑えることが可能となります。

訪問看護ステーションや従来のかかりつけ医と連携をしっかりと図りつつ、患者にとって最適な在宅看護となるように支えていきます。

『機能強化型在宅療養支援診療所』はさらに特化した施設

訪問看護や往診といった在宅医療を支える在宅療養支援診療所に対して、機能強化型在宅療養支援診療所というさらに診療内容等に対して実績がある施設が登場しました。

機能強化型在宅療養支援診療所は単独型と連携型に分かれており、それぞれに設置基準が定められています。

【単独型】

単独型は、名前の通り、1つの医療施設で設置基準を満たしている施設になります。

設置基準としては以下になります。

①在宅療養支援診療所の設置基準を満たしていること

②過去1年間で往診を10件、看取り等の実績が4件以上あること

③往診を担当する常勤医師が3名以上在籍していること

単独型は、1つの施設で在宅医療に関する支援を行うことが可能となりますので、在宅医療を利用したいと検討している方にとっては非常に魅力的でしょう。しかし、1つの施設で基準を満たさなければならないので、まだまだ該当する施設が少ないのが現状です。

もちろん単独型の機能強化型在宅療養支援診療所もありますが、希望する場合には遠方の施設になってしまう可能性も高くなるので、ケアマネジャーやかかりつけ医に相談し紹介してもらうようにしましょう。

【連携型】

1つの施設で全ての設置基準を満たしている単独型に対して、連携型は数の施設が連携して、設置基準を満たしている機能強化型在宅療養支援診療所になります。

設置基準としては以下になります。

①10施設未満の診療所(200床未満の病院も含む)が在宅療養支援診療所の設置基準を満たしていること。

②連携の施設全体で往診を担当する常勤医師が3名以上在籍していること。

③過去1年の往診実績が10件以上、看取り実績が4件以上あること。

④書く医療施設に過去1年の往診実績が4件以上、看取り等の実績が2件以上あること。

このように、連携型の強化型在宅療養支援診療所の場合には、1つの施設での設置基準のハードルは少なくなりますので、現在強化型在宅療養支援診療所と言われている施設の多くが連携型です。

複数の施設が一緒になり在宅医療を支えていく上に、単独型在宅療養支援診療所に比べて施設が多くありますので、在宅医療を行いやすくなります。

機能強化型在宅療養支援診療所のメリットとは?

先程紹介したように、単独型在宅療養支援診療所にしても連携型在宅療養支援診療所にしても在宅医療を支えていく施設であることに間違いはありません。

では、実際に患者やその家族にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

①24時間体制で往診や訪問看護を行うことが出来る

入院医療と異なり、急な容態変化があると在宅医療ではすぐに対応することが難しくなります。

そのため、家族や患者本人は常に緊急事態があった場合にはどうすれば良いかといった不安を心の中に抱えています。

強化型在宅療養支援診療所では24時間体制で往診や訪問看護を行うことが出来ますので、急な変化があった時にすぐに連絡を行い医師が診察に来てくれたり、すぐに救急車を要請すべきか、どのように対応すべきかといったアドバイスをすることが可能となります。

実際に、厚生労働省の調査によると機能強化型在宅療養支援診療所の25時間体制の往診や訪問看護を行うことが出来るという点において、約95%が満足していることがわかっております。

在宅医療であっても、必要な時に必要な医療を受けることは十分に行えるという点は、機能強化型在宅療養支援診療所の大きなメリットでしょう。

②常勤医師が多いために万全な体制をとることが出来る

在宅療養支援診療所の設置基準として常勤医師が3名以上という決まりがあります。

常勤医師が多いということは、もしも多くの患者が医師の診察を受けたいとなった場合であっても、万全な体制で臨むことが出来ます。

看護師や医師が多く常勤していることで、よりよい医療を提供することが出来ますし、多くの専門的な医師がいることで様々な患者の様子を把握し診察することが出来るので安心して利用することが出来ます。

③緊急時に入院出来る病床がある

在宅医療はあくまでも容態が安定していたり、余生が短い場合に充実した生活を送りたいという想いがある場合に行うことが出来ます。

つまり在宅医療であっても、容態が悪化した場合には入院措置を行わなければならなくなります。

しかし、その場合にすぐに入院先や病床がなければ、容体が急変してしまい手遅れになってしまう恐れがあります。

そうならないためにも、機能強化型在宅療養支援診療所ではすぐに入院出来る病床が確保されていますので、いざという時にもすぐに入院手続きを行うことが出来ます。

緊急時にすぐに対応することが出来るというのは、患者にとっても大きな安心材料になるでしょう。

このように、在宅療養支援診療所や機能強化型在宅療養支援診療所では、在宅医療を行う患者にとって必要な支援やサポートを行えるように施設が整えられています。

上記以外にも緊急往診や看取りの件数が多いために、経験豊富な医師が多く質の高い医療を提供することに繋がります。

患者にとっても質の高い医療を提供することや、在宅医療を安心して利用することが出来るということは大きなメリットになるでしょう。

まとめ

高齢化社会である日本では、今後も在宅医療の発展に期待が高まることが予想されます。

今までは治療を行うために、通院か入院という選択肢しかありませんでしたが、その人らしい人生を歩んでいくために、患者自身が治療方法についての選択や決定を尊重されるようになりました。

在宅療養支援診療所は、病気や障害などの理由により通院が困難な方に対して適切なケアを行うために自宅へ医師や看護師が訪問し看護や診療を行います。

入院と異なり、緊急時に瞬時に対応してくれるナースが側にいるのではありませんので、何かあった場合にも24時間365日すぐにかけつけてくれる看護師や医師がいてくれるということが、安心に繋がります。

在宅療養支援診療所などの体制をしっかりと整えていくことで、在宅医療がより良くなりさらなる発展へ一歩踏み出していくでしょう。