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在宅医療のメリット・デメリットとは?

2022年03月25日

入院医療や通院医療の2通りが主流だった今までの医療が、「在宅医療」の登場で、患者自身とその家族の意思を反映されることが可能になりました。

在宅医療を選択する人は年々増加していますが、在宅医療にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

今回は在宅医療のメリット・デメリットについて解説します。

今後の医療を支えていく在宅医療

入院を行い検査や治療を行う入院医療や、自宅から病院へ通いながら健康維持や治療を行う通院医療。

この2つの医療が今までの医療を支えてきました。

しかし、体が不自由であったり病院が遠かったり待ち時間が長いために通院に1日かかりになる等、通院が困難であったり、入院をしても病状の改善が見られなかったり、入院を行うほどではない場合に自宅で療養を行う『在宅医療』という選択肢が登場しました。

在宅医療は名前の通り、自宅で生活を行いながら療養を行っていきます。

入院医療でも通院医療でもなく、自分の安心できる場所で生活をしながら医師や看護師、理学療法士などが自宅へ訪問してくれるので、病気や障害の療養だけでなく、生活動作のリハビリや口腔ケアなども行うことが出来ます。

入院医療、通院医療に次ぐ第3の医療として在宅医療が注目されています。

在宅医療には多くのメリットがある

第3の医療と言われている在宅医療ですが、今後の医療を担うものとして注目を浴びています。

在宅医療を選択する人も徐々に増えてきており、今後も在宅医療の充実が目標とされている中で、どのようなメリットがあるのでしょうか?

①自宅で療養出来るために生活の質が向上する

在宅医療が他の医療と異なる大きな理由は、何といっても自宅で療養をすることが出来るという点です。

病院では最先端の治療や検査を行うことが出来ますが、自宅のように心から安心できる場所で生活を送ることは出来ません。

住み慣れた場所、食べ慣れた味付けの食事、大切な人との生活を送りながら健康維持や病状の悪化を防ぐために医療処置を行ったり、服薬管理を行っていくことが出来るのは、在宅医療の大きなメリットとなるでしょう。

病院で入院療養をすると、様々な制約がありストレスが溜まってしまうことがあります。

大部屋であれば他の人の動向を常に感じてしまいますし、食事も自分の好みでなかったり、排泄方法も決められている、入浴や食事の時間も決められており好きな時間にテレビを見たりと自由な行動は制約されてしまいます。

しかし、自宅であれば安心できる場所で、いつもの布団、食事の味付けもいつも通りで、他の方の視線を気にしたり自分の動きを抑える必要もありません。

家族のサポートは必要になりますが、好きな時間にお風呂に入り、食事に自分の食べたいものを出してもらうようにお願いすることも可能で、在宅医療にすることで、生活の質(QOL)を高めることが出来ます。

また、入院療養は患者にとって精神的な負担も大きくなりネガティブな想いに傾いてしまうことがあります。

基本的に同じ病気や症状の方と同じ病室になりますので、進行していった方を目にしたり、亡くなる方がいる病室で入院を余技なくされている方もいます。

そうなると、「いつか自分もこうなってしまうのか」と死を実感してしまったり、不安な気持ちを助長してしまう恐れがありますが、自宅の場合であれば住み慣れた場所で安心して生活を送ることが出来ますので、入院中と比べると圧倒的にストレスを軽減することが出来、その結果前向きに治療に挑むことが出来ます。

生活の質を高める精神的な安心やストレスのない生活というのは、単に治療を行うよりも大きな効果を身体に与えることがあり、入院している時よりも体調が良かったり、治療の効果が見られるケースも多くあります。

治療効果が期待できる場合であれば、入院による治療を受けることを優先される方が多いです。

しかし、例えば末期がんの方のように、余命宣告をされている方などであれば、治療による延命よりも残された時間を自分らしく使いたいと考えている方は多く、2012年の調査では、最後を迎えたい場所としては自宅が約5割になっており、いかに患者の多くが住み慣れた場所で大切な人と一緒に最期を迎えたいかがわかります。

在宅医療はそういった方の想いを実現するために、現在も多くの拡充を求められています

②ストレスを削減することが出来る

「自分らしい生活を送る」

実は病気や障害を抱えている方にとっては、意外とハードルが高いことになります。

症状や病気の進行具合によって、食事内容が決められてしまったり、行動が制限されてしまうため、自分が「こうしたい」「こうありたい」と考えていても実現するのが困難なケースが多くあります。

自分がしたいことが出来ないということは、心に大きなストレスがかかってしまいます。

病気の治療では、症状や体調に合わせて治療方法を決定していきますが、単純にこの治療をしたから必ず効果が得られるということではありません。

逆に、ストレスのない生活を送ることで、治療よりも大きな効果を得ることもあります。

ストレスは万病のもとと言われるように、大きなストレスを抱えたままの治療では充分な効果が得られないことがあり、いかにストレスが体に影響を及ぼしているかがわかります。

在宅医療はそのストレスを入院医療に比べて圧倒的に減らすことが出来ます。

例えば、睡眠1つをとっても睡眠方法は千差万別です。

豆電球や部屋が明るくないと眠れない方、自分の気に入った布団や枕でなければ眠れない方、眠る前に必ずテレビを見たり音楽を聴いてから眠る方、静まり返った部屋でなければ寝付けない方…このように、誰しもが同じ方法で眠るわけではないにも関わらず、入院をする時には一律で病院のルールに沿って合わせなければなりません。

しかし、自宅であれば自分の好きなスタイルで入眠することが出来ます。

このように、ストレスを軽減するというのは在宅医療のメリットであり、患者の治療効果も上げる可能性が高くなります。

③通院に対する家族の負担を軽減出来る

在宅医療であれば、自宅に医師や看護師、歯科医師などが来て処置を行ってくれます。

訪問看護や往診などは代表的な在宅医療ですが、他にも訪問リハビリテーションや訪問薬剤指導など多方面から患者をサポートし、自宅でしっかりと療養出来るようになっており、患者だけでなく在宅医療を支えていく家族の方の支援も行うことが出来ます。

入院医療や通院医療の場合であれば、家族の方が病院に直接行くことになります。

自分1人が行くだけなら簡単だと考えるかもしれませんが、病院の面会時間に合わせてスケジュールを考えたり、必要なものを忘れた場合には取りに戻ったりしなければなりません。

近くの病院であれば良いですが、中には片道1時間以上かかる方もいますので、そうなると往復だけで大きな時間がかかってきてしまいます。

仕事をしていると自分のスケジュールに加えて、病院のスケジュールも合わせていかなければならず、家族の負担が増加してしまいます。

また、通院に関しても体が自分の思うままに動く方であればスムーズに病院へ行くことが出来ますが、中には通院であっても多くの機材と繋がっていなければならなかったり、思う様に体を動かすことが出来なければ、車に乗って移動するということも重労働です。

障害や病気の種類によっては胃瘻であったり医療チューブを必要としている方が車に乗り込み通院することは患者と家族に負担がかかってきてしまいます。

また、症状によっては通院途中で体調を崩してしまう方もいます

つまり、通院といっても病気や障害を抱えている方にとっては簡単なものはないのが現実です。

しかし、在宅医療であれば医師や看護師が直接自宅へ訪れて処置などを行ってくれますので、希望する時間まで自宅で自分の時間を使うことが出来ますし、自分のスケジュールにもある程度は合わせてもらうことが出来ます。

在宅医療では、通院や入院に関する家族の負担を減らすことが可能となります。

万能な医療ではなくデメリットも存在する

在宅医療は患者の希望するスタイルで医療を提供するだけでなく、自宅で充実した自分らしい生活を送ることが出来ます。

ストレスが少なく、自分の好きな事や食事、睡眠、趣味などを行いながら、ちゃんと病気に対する処置や療養を行い健康維持をすることが出来るのは、在宅医療の大きなメリットとなります。

しかし、在宅医療も万能な医療ではありません。

メリットがいくつもある反面、デメリットもあることを知っておくことが大切です。

では、在宅医療のデメリットとは何があるのでしょうか?

①自分で選択しなければならないため迷いが生じてしまう

在宅医療はオーダーメイド医療と言われるように、必要な医療を必要なだけ訪問することが出来ます。

医師、看護師、歯科医師、理学療法士などが直接自宅へ訪問してくれますので、自分が望む時間帯に調整してもらうことが可能です。

自分で選択し決定出来るというのは良い反面、自分で選択し判断しなければならないので、選択する際に迷いが生じてしまいます。

医師や看護師から決められた量の薬を時間通りに飲むことは出来ますが、頓服のように痛みが強い場合に飲む、と言われると、どの程度の痛みで服薬すれば良いのかわからず飲み損ねてしまったり、体調が悪くなったら連絡をして、と医師に言われても、体調が悪いというのが自分で判断することが出来ず連絡をすることをためらってしまうことは多くあります。

「何度も連絡をするのは迷惑だろうか」「気になるけれどまた次の訪問時に尋ねようか」と自己解決してしまうケースがありますが、中にはすぐに服薬しなければならないものであったり、医師がすぐに向かわなければならない状態であれば、その自己判断は命の危険に繋がってしまいます。

その点、入院医療であれば定期的に看護師が状態を見にきてくれたり、すぐに質問しやすい環境になっているので疑問に感じた事等は直接聞くことが出来ますし、体調の変化にもすぐに気が付いて対処することが出来ます。

在宅医療はどうしても、訪問看護の時間でなければすぐに医師や看護師が判断することは困難であり、入院医療に比べて対応に時間がかかってしまいます。

すぐに対応を迫られた時には在宅医療の方が遅れてしまうという点はデメリットとなるでしょう。

②常に医師や看護師がいないという不安がある

①でも解説しましたが、在宅医療の場合だと自宅で看護を行うことになりますので、当然ながら医師や看護師は常在していません。

医師や看護師が常にいる場所であれば、体調の変化があった場合にすぐに対応することが出来ますし、いつでもナースコールを押せば見にきてくれるという安心感を在宅医療で充実させるのは難しくなります。

現在は、24時間365日体制で在宅医療を支援する施設も多くありますが、やはり入院医療のように即座に来てくれるということはないのが現状です。

在宅医療は、病状が安定していたり、自宅で生活をしながら療養を行った方が効果が高い方、がんなどで終末期と言われいる方などが選択されることが多いですが、いくら退院時に病状や健康状態が安定していても急な容態の変化があるケースもあり、緊急時の対応に関してもデメリットの1つとなります。

もしも救急車を要請し搬送された先が、いつもの病院ではなく初めての病院だった場合、適切な治療を行うために、医師は病名から病状、いつもはどのような治療を行っているのかなどを詳しく聞き取ることとなります。

正しい情報を得てから処置を行うことになるので、処置のスタートまでに時間がかかってしまう恐れがあります。

しかし、入院医療であればすぐに対処することが出来、緊急で手術になっても対応することが出来る可能性が高いです。

在宅医療では緊急時の対応に時間がかかってしまうことや、家族や患者がすぐに対処することが出来ないことに関して不安に感じてしまうことはデメリットと言えるでしょう。

③家族が看護や介護を行うので負担が大きくなる

在宅医療での最も大きなデメリットといえば、やはり家族などの支援やサポートを行う方の負担が大きいという点です。

在宅医療は患者の希望に寄り添った医療を提供することが基本となります。

自宅での療養になりますので、もちろん同居している家族にサポートは必要不可欠になります。

特に身体的な機能が低下している場合であれば、入浴時のお風呂や食事にダイニングにいく、排泄のためにトイレにいくといった日常的な事に関してもサポートが必要になります。

つまり家族の方は、看護や介護が最優先事項になるということです。

在宅医療は安心できる場所で大切な人と一緒に過ごすことが出来る患者の想いや気持ちに寄り添った医療であることは間違いありませんが、それに伴いサポートや支援内容を家族が同意、理解してくれていることが重要です。

現在は介護保険などを利用することで、身体的な負担や費用を軽減することは可能ですが、それでも看護師や医師がいない間は家族が介助を行うことになりますので、家族の負担は大きくなってしまいます。

家族がいて、かつ在宅医療に対して理解がある方であれば良いですが、サポートをしてくれる方が身近にいなかったり、家族が在宅医療に対して反対であれば、公的な支援だけで在宅医療を継続していくには限界があります。

④最先端の治療や検査は受けることが難しい

在宅医療は患者の希望する方法で療養をサポートしていくことになりますが、看護師が定期的に自宅へ訪問し健康状態や病状、服薬について確認、把握を行います。

点滴や血圧測定など自宅で受けられる検査であれば受けることが出来ますが、CTやMRIといった大型の機器が必要な検査になると自宅で受けることは出来ません。

これらの精密検査を訪問診療で行うことはまず不可能で、来院して検査をうけてもらう必要があります。

また、手術であったり最先端の治療も在宅医療で受けることは出来ないのが現状です。

在宅医療は治療に重きを置いているのではなく、あくまでも患者の意思を重要視しています。

治療して病気の完治を目指すのではなく、痛みを緩和したり、今の状態を維持していくことを目的としているので、精密検査や手術、高度で最先端の治療となると入院医療や通院医療を選択しなければなりません。

医療費の負担は入院医療と比べてどうなる?

在宅医療を行うにあたって、家族の負担が増えるたり、緊急時の対応について不安に思う方も多いですが、もう1つ気になるのが在宅医療を行うための費用がどれくらいかかるのか、ということですよね。

入院医療や通院医療であれば、もちろん保険を活用することが出来ますので、1割~3割負担ですみますし、限度額適用認定証を使用すれば上限以上の支払いをすることはありません。

では、在宅医療ではどうしょう?

在宅医療も、介護保険や健康保険制度を利用することが出来ますので、費用面はぐんと抑えることが出来ます。

また、通院医療の場合、もし病院へ行くために一般的なタクシーや福祉タクシーを利用するのであれば、これらは保険での値段にはならず自費負担になるので、往復の値段もプラスされるので、1回の通院費が高くなってしまいます。

在宅医療であれば、直接医師や看護師が自宅へ来て処置を行いますので、タクシー代等に費用はかかりません。

交通費が高くかかる方であれば、圧倒的に在宅医療の方が費用を抑えることが出来ます。

しかし、入院医療や通院医療であっても交通費がかからない場合であれば、そちらの方が費用を抑えることが出来る可能性が高いです。

医療費といった在宅医療にかかる費用については、ケアマネジャー等に相談すると見積もりを行ってくれますので、気になった場合は一度見積もりを受けてみましょう。

まとめ

自宅で療養したいと考えている方は多く、特に終末期の方などであれば、延命治療を行わずに自宅で最期を迎えたいと在宅医療を選択されるケースもあります。

在宅医療に限らず医療にはメリット・デメリットが存在しますが、どの医療を受けるか選択をする場合には、どちらもしっかりと検討し総合的に判断する必要があります。

在宅医療は、先ほど述べたように患者の想いや家族の想いを尊重される医療です。

在宅医療では家族の負担が増えたり、緊急時の対応に不安を感じる方も多くいる一方で、自宅でしか得ることが出来ない精神的な安定や安心、安らぎがあり充実した生活を送ることが出来ます。

在宅医療を選ぶ際には、患者だけでなく家族と一緒にメリット・デメリットを考えていくことが大切です。