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『在宅医療』とは?住み慣れた場所で安心できる生活を送るために

2022年03月08日

自分の最期について考える『終活』という言葉が話題になりましたが、それに伴い『在宅医療』についても注目されるようになりました。

在宅医療は、第3の医療と言われているように、今後の日本に医療現場での中心的な存在になっていくと考えられています。

では、在宅医療とはどのような医療を指すのでしょうか?

今回は、在宅医療にスポットをあてて解説します。

在宅医療とは?

在宅医療という言葉を耳にする機会が増えてきました。

本来、医療とはけがや病気になった時に、安全でかつ質の高いサービスを受けられる場所で治療を行うことで、病院などの医療体制が整っている場所で受けることが軸になっています。

そのため、現在はどの年齢の方であっても医療サービスを等しく受けることが出来るように保険制度が定められています。

つまり、通常は風邪などの病気になったり、怪我をしたりと、体に不調をきたした場合には、病院へ出向き医師の診察後、適切な治療を受けることになります。

しかし、上記のような医療しかなければ、年齢や病気により体の機能が低下してしまい、通院することが困難になってしまうと、医療サービス自体を受けることが出来なくなってしまいます。

誰しもが平等に医療を受けるために、医療サービスを受ける必要があるものの、通院することは困難な方に『在宅医療』という第三の医療が誕生しました。

在宅医療は、自宅から通院が難しい方に医療を提供するだけでなく、末期がんなどの終末期の方が、安心できる自宅で治療を受け過ごしたいという方の想いも汲み取りながら医療サービスを提供することが可能になります。

医療を提供したい医師や看護師と、自宅で治療を受けたい患者の想いを叶えるために在宅医療は、1つの方法として選択することが出来、入院や外来の次の第三の医療として認識されています。

在宅医療は、自宅で医療サービスを受けることになりますので、もちろん医師や看護師が訪問します。

他にも必要とあらば歯科医師や理学療法士、ケアマネージャー等の患者にとって必要な治療やケアを行うための人材であれば訪問することが出来ます。

在宅医療は医師と患者だけでなく、多くの方が連携をしてチーム一丸となり、患者のサポートを行っていきます。

以前であれば、医療サービスは通院や入院のみでしたが、患者のニーズの多様化に伴い、医療の在り方も変化していきていることがわかります。

在宅医療は、患者さんの想いに重きを置いて支援していく新しい形の医療サービスとなります。

『自宅で治療を受けられる』だけではない在宅医療の魅力

自分の家で適切な医療を受けることが出来る在宅医療。

在宅医療にはどのような魅力があるのでしょうか?

『安心できる場所で適切な医療を受けることが出来る』

在宅医療の最も大きな魅力は、自宅で医療を受けられるということです。

平成22年の内閣府のアンケートでも、自宅で介護を受けたいと思っている方は約8割、平成24年の調査では、自宅で最期を迎えたいと思っている方は約5割以上に上りました。

もちろん、医療設備という面では通院医療や入院医療に勝るものはありませんが、在宅医療を選択した場合には、住み慣れた場所で大切な方と自分の想う生活を送ることが出来ます。

大切な家族が側にいたり、いつもの部屋で、いつもの食事を食べ、馴染みある布団で睡眠をとることが出来ます。

病院は積極的に治療を行う場所になりますので、食事や行動に制限がかかってしまい、どうしても窮屈な想いをしたり、ストレスが大きくなってしまいます。

特に、入院医療であれば、多数の方と生活を共にしますので、周囲に気を配わなければならなかったり、大切な方と離れて治療主体の生活を送らなければなりませんが、在宅医療であれば今までの自分らしい生活を送ることが出来ますので、生活の質(QOL)が向上し、安心感や満足感を得ることが出来ます。

それは、在宅医療の大きな強みであり魅力になるでしょう。

特に終末期等の患者さんの場合であれば、残りの時間を自分の安心できる場所で大切な人と充実した生活を送ることで、治療に対しても前向きな気持ちを持つことが出来、結果として病状が改善したり、病状の悪化の予防に繋がることも期待出来ます。

【治療を行いながら今まで通りの生活を送ることが出来る】というのは、通院医療や入院医療には叶えることが出来ない、在宅医療の大きな魅力です。

『患者本人や家族の負担を軽減することが出来る』

在宅医療は、通院や入院を行い治療をするのではなく、自宅で生活をしながら適切な治療を行うことが出来ます。

在宅医療を利用する方の多くは、病気や高齢により通院が困難になった方になりますが、そういった時に家族の介助や介護は必要不可欠です。

特に在宅医療を受ける必要がある場合には、服薬や食事内容などのサポートが必要になります。

また、寝たきりであったり、車いすの生活だと生活の中で家族が支援することも多く、通院をするにあたっても家族の負担は大きくなってしまいます。

しかし、在宅医療であれば自宅にいながら医師や看護師が訪問して専門的なケアから医療行為を行うことが出来ますので、負担を減らすことが出来ます。

また、支援の方法についても相談したり、介助方法を直接教えてもらうことが出来ますので、精神的な負担も減らすことに繋がります。

患者本人だけでなく、日常生活を支えている家族や支援者の負担の軽減も在宅医療の魅力でしょう。

『医師と患者・家族が深く関わることが出来る』

在宅医療では、自宅へ直接医師や看護師が訪問し医療行為や専門的なケアを行いますが、単に治療を行うだけではなく、かかりつけ医としての役割も果たすことになります。

患者の病状や普段の様子から、患者や家族のケアに関する悩みなどを把握した上で、サポートを行っていきますので、より深く関わることが出来ます。

患者や家族からも相談しやすく、悩みを共有した上で、どのような支援を行うべきかを伝えてくれるので、患者と家族、医師や看護師との信頼関係を築くことが出来ます。

『24時間365日体制で支援が可能』

在宅医療の大きな不安として、容体が急変したり、緊急事態が発生した時に即座に対応することが難しいという面があります。

入院医療の場合であれば、ナースコールを押せばすぐに看護師が来て様子を確認して必要な処置を行うことが出来ますが、在宅医療の場合にはその判断を行うのが家族になりますので、どうしても緊急時に対応することが出来るのが、冷静で正常な判断をすることが出来るのか、という不安が残ります。

しかし、現在は在宅医療体制も徐々に環境整備が行われてきているため、緊急時の対応も迅速に行われるようになってきました。

そのため、24時間365日いつでも緊急時には相談することが出来、必要な場合であればすぐに自宅へ訪問してくれたり、緊急時の対応の仕方を伝えてくれます。

救急車を呼ぶべきかという判断も、通常であればすぐに判断することは可能ですが、緊急時になるとパニックになってしまいどうすれば良かったかわからなくなってしまうことがあります。

そういった時にも、冷静に対応が出来るように患者や家族をしっかりとサポートが出来る体制が整えられています。

『在宅医療の方が全体の費用を抑えられる場合がある』

現在は限度額認定や健康保険により、医療費は抑えられる傾向にありますが、費用を負担する方からすれば出来る限り抑えたいものですよね。

特に、介護保険などと併用されている方であれば、医療費に介護サービスの費用と各々の費用の負担は大きくなってしまいます。

通院費用と比べた時に、在宅医療の方がトータルの費用を抑えられる場合があります。

特に、通院の際にタクシー等を利用しなければならない方であれば、医療費以外に交通費の負担が大きくなります。

往復の交通費と医療費に対して、在宅医療にかかる費用を比べた時には、在宅医療の方が少ないケースもありますので、地域包括支援センターやかかりつけ医、ケアマネージャーに相談を行い交通費等を含めた費用を計算してもらいましょう。

このように、在宅医療には通院医療や入院医療では叶えることが難しい、『住み慣れた場所で生活を送りながら信頼のおける医師や看護師による適切な治療やケアを受けることが出来る』という魅力があります。

通院するのではなく今までの生活を送りながら、自分の布団で眠り、いつもの味付けの食事を口にし、大切な人と会話を送りながら、治療を行っていく在宅医療には、患者と家族の想いに寄り添った医療になります。

まとめ

通院医療、入院医療に続き第3の医療として注目されている在宅医療。

治療がメインとなる通院や入院と違い、在宅医療は患者と家族の意思に重きを置かれています。

『我が家で最期を迎えたい』『治療は自宅で受けたい』という患者側の想いと、『最期まで一緒に生活をしたい』『自宅で生活を送らせてあげたい』という家族の想いに寄り添うことが出来る在宅医療は、今後も多様化していきより私たちの身近になっていくでしょう。